■ 適用法令について

【PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)】

PRTR法は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境保全上の支障を未然に防止することを目的としている。対象化学物質を取扱う事業者は、環境中への排出量等を自ら把握し、行政機関に年1回届け出なくてはならない。行政機関はそのデータを整理・集計し、また家庭・農地・自動車などから排出されている対象化学物質の量を集計して、2つのデータを併せて公表する。
◆対象物質
 第一種指定化学物質 PRTR制度及びSDS制度対象 462物質(うち特定第一種指定化学物質は15物質)
 第二種指定化学物質 SDS制度対象 100物質

◆PRTR制度の対象事業者
 下記のA)、B)の両方に該当し、C)のいずれかに該当する事業所を有している事業者が対象となる。

 A) 対象業種 全製造業、サービス業の一部など(出版・印刷・同関連産業、医療業など)
 B) 従業員数 常用雇用者数21人以上の事業者
 C) 取扱量

第一種指定化学物質の年間取扱量が1t以上の事業所

特定第一種指定化学物質(発がん性物質)の年間取扱量が0.5t以上の事業所

【有機溶剤中毒予防規則(労働安全衛生法)】

有機溶剤は、工業的に使用されているものだけでも500種類以上が知られている。これらのうち有機溶剤中毒予防規則の適用を受けるのは44種類であり、以下のように分類される。
 第一種有機溶剤  2種類 1,2-ジクロロエチレン、二硫化炭素
 第二種有機溶剤  35種類 イソプロピルアルコール(IPA)、キシレン、メタノールなど
 第三種有機溶剤  7種類 ミネラルスピリット、ガソリンなど

有機溶剤中毒予防規則では以下のような事項などに関する規制が決められている。(抜粋)

 管理 有機溶剤の蒸気発生源を密閉する。(使用後は必ず栓をする)
 換気装置 第一種及び第二種有機溶剤等 局所排気装置の設置
第三種有機溶剤等 全体換気装置の設置
(タンク等の内部作業:局所排気装置の設置)
 保護具 必要に応じた呼吸用保護具、保護手袋等の着用
 作業環境測定 有機溶剤等を取扱う屋内作業場は、作業環境測定機関等により6ヶ月以内ごとに1回、作業場の濃度を測定し、その結果を記録して保存しなければならない。
 健康診断 有機溶剤等の業務に常時従事させる従業員に対し、6ヶ月以内ごとに1回、医師による有機溶剤健康診断を実施しなければならない。
 作業主任者の選任 一定の技能講習を修了した有機溶剤作業主任者を選任しなければならない。
 掲示 ①有機溶剤が人体に及ぼす影響、②取扱い上の注意事項、③中毒が発生したときの応急処置など有機溶剤等使用の注意事項について、労働者が見やすい場所に掲示しなければならない。

【危険物政令(指定数量)】

 現状を把握し、危険物へ対応しましょう。
  • 保有している危険物の量を調べ、消防法に照らして指定数量の何倍になっているかを調べます。
  • 各品名の倍数を集計し、合計を出します。
  • 指定数量の倍数に応じて下記の規制を受けます。
  • ①指定数量の倍数1/5未満 → 規制なし
  • ②指定数量の倍数1/5以上1未満
  •  火災予防条例による規制を受け『危険物屋内貯蔵取扱店』の届出が必要です。
  • ③指定数量の倍数1以上
  •  消防法の規制を受け『危険物屋内貯蔵所』『危険物一般取扱店』等の許可が必要です。
種 別 品 名 性 質 指定数量 危険等級
第四類 特殊引火物   50ℓ
第一石油類 非水溶性液体 200ℓ
水溶性液体 400ℓ
アルコール類   400ℓ
第二石油類 非水溶性液体 1,000ℓ
水溶性液体 2,000ℓ
第三石油類 非水溶性液体 2,000ℓ
水溶性液体 4,000ℓ
第四石油類   6,000ℓ
動植物油類   10,000ℓ

指定可燃物の貯蔵及び取扱いの基準については、市町村条例により定められています。

【特化則(特定化学物質障害予防規則)】

特化則は労働安全衛生法のもと、労働者が化学物質による健康障害を予防することを目的とし、作業主任者の選任や発生抑制措置などに関する規制が決められており、特定化学物質は以下のように分類される。
第一類物質 7種類 塩素化ビフェニル(PCB)、ベリリウム及びその化合物など
第二類物質 特定第二類物質:24種類 アクリルアミド、アクリロニトリルなど
特別有機溶剤 :12種類 エチルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタンなど
オーラミン等 : 2種類 オーラミン、マゼンタ
管理第二類物質:17種類 アルキル水銀化合物、インジウム化合物など
第三類物質 8種類 アンモニア、二硫化硫黄、硫酸など

※特別管理物質:第一類物質及び第二類物質のうちがん原性物質またはその疑いのある物質(34種類)を特別管理物質として定めている。


特化則では分類によって以下のような措置が決められている。(抜粋)

発散抑制措置 第一類物質及び第二類物質は局所排気装置等の設置。第三類物質は規定なし。
作業主任者の選任 定められた技能講習修了者より特定化学物質作業主任者を選任(すべて)
作業環境測定、記録の保存 第一類物質 6ヶ月以内ごとに1回実施。記録の保存(特別管理物質は30年間、その他は3年間)
第二類物質 6ヶ月以内ごとに1回実施。記録の保存(特別管理物質は30年間、その他は3年間)
第三類物質 規定なし
 特殊健康診断、記録の保存 第一類物質 6ヶ月以内ごとに1回実施。記録の保存(特別管理物質は30年間、その他は5年間)
第二類物質 6ヶ月以内ごとに1回実施。記録の保存(特別管理物質は30年間、その他は5年間)
エチレンオキシドとホルムアルデヒドについては、特化則健康診断はないが、安衛則45条に基づき一般定期健康診断を6ヶ月以内ごとに1回実施。
第三類物質 規定なし
 作業記録の作成、記録の保存 特別管理物質は30年間保存。その他の物質は規定なし。
 掲示 特別管理物質は、①物質の名称、②人体に及ぼす作用、③取扱い上の注意事項、④使用すべき保護具を作業に従事する労働者が見やすい場所に掲示しなければならない。
その他の物質は規定なし。

【がん原性指針(化学物質による健康障害を防止するための指針)】

厚生労働大臣は、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、がんを起こすおそれのある化学物質について、労働者の健康障害を防止するための指針を公表している。(健康障害を防止するための指針公示第25号) 対象物質はクロロホルム、ジクロロメタンなど34物質で、長期毒性試験の結果、ほ乳動物にがんを生じさせることが判明したもの、または国際機関などで発がんのおそれがあるとされているものである。 労働者に対象物質等を製造させる、または取扱わせる事業者は、次の措置を講じる必要がある。
1.事業場における対象物質等の製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様を考え、必要に応じ、危険性や有害性を調査し、作業環境管理、作業管理を行うこと。
2.作業環境測定屋内作業場では、空気中の対象物質の濃度を定期的に測定し、測定結果の評価を行い、その結果に基づき必要な措置を講じること。作業環境測定の結果の記録、評価の記録は、30年間保存するよう努める。
3.労働衛生教育対象物質を取扱う労働者に対して必要な教育を行うこと。
4.労働者の把握 ①労働者の氏名、②従事した業務の概要と業務に従事した期間、③対象物質によって著しく汚染される事態が起きたときは、その概要と講じた応急措置の概要を記録する。これらの記録は、30年間保存するよう努める。
5.対象物質は通知物質や表示物質に該当しているので、安全データシート(SDS)の内容を労働者に周知すること。

※対象物質等のうち、有機則(有機溶剤中毒予防規則)、特化則(特定化学物質障害予防規則)が適用されるものは、有機則、特化則の規定が優先される。